LIVE REPORT

MILKBAR

12/18 @ 京都VOXhall

PHOTO:hub / TEXT:Y.Yajima

 MILKBARがあまりにも丸裸で、なんにもかっこつけずに音楽をしてくれたから、私も今回のレポートは、かっこいい表現だとか誇張だとかを一切使わず、感じたままに書きたいことを書いてみようと思う。

 異質ポップバンドと呼ばれる3ピースバンド・MILKBAR。そう、彼らには「異質」という言葉がぴたりと当てはまる。それは、北小路さん(Vo./Gt.)の心を痛めつけられるような鋭さと甘えさせてくれるような優しさを併せ持つ唯一無二な歌声、ベースとドラムが織り成す全身が吸い込まれていくようなリズムワーク、そしてネガティブな思想も自己否定の言葉も全てストレートに表現してしまう歌詞と、他のポップバンドにはない少しひねくれた強烈な個性があるからだ。

 多くのポップバンドは、明るくて前向きなことを歌って人を勇気づけたり、共感を得られるようなことを歌ったりしてリスナーを惹きつけるが、MILKBARの惹きつけ方は、これまた「異質」である。きっと誰しもの日常に、自分のことを少しでも良く見せようとしながら生きている部分があると思うが、この3人は自分たちの汚い部分や醜い部分をさらりと人前で見せる。本当に、「さらり」と。それができることを羨ましく思う。そしてMILKBARのライブを見ていると、3人に甘えたくなる。関係が深い知人に対して「この人なら、私の全てを受け入れてくれるから、どんな姿も安心して見せられる」と思うような、そんな心の開き方に似た感情が沸いてくる。

 私が初めてMILKBARに出会ったのは、今年の3月に取材をさせてもらった時。その時私は、「音源を聴かせてもらって“もがいている”と感じた」なんて偉そうに言ったことを覚えている。でも、この日はそんなことは一切感じなかった。人としてもがいている姿を堂々とさらけ出している姿はむしろ清々しく、そしてMILKBARにしか作れない音楽を確立させたことで、バンドとしてもがいている姿は消え去っていた。

jizue

12/6 @ Live Spot RAG

PHOTO:hub / TEXT:Y.Yajima

 ピアノ・ギター・ベース・ドラムの4つの楽器で、1つのストーリーや心情を描いていくエモーショナル・インストバンド、jizue。ジャズ・ロック・クラシック・現代音楽など、様々な音楽要素を混ぜ合わせたjizueの音楽は、どのジャンルにも属さない唯一無二なサウンドだ。

 1曲目には、メンバーやお客さん等との11つの縁がまた次の縁へと繋がり、やがて大きな和ができる喜びを表した『En』が演奏された。この4人は特に“メンバーとの縁”をとても大切にしているように思う。普段からすごく仲の良い4人は、ステージ上でもその絆の強さを見せ、鳴らす音や表現したいことに対する一体感が凄まじい。さらに、誰か1人が目立つわけではなく、それぞれの音を引き立て合いながら鳴らすことからも、互いの個性を尊重し合っていることが分かる。

 11つの楽曲において、まるで物語のような起承転結を感じながら、様々な感情が揺れ動く。穏やかな演奏の直後に、ダイナミックなサウンドが展開したり、細やかな音の後に、大胆なプレーがなされたりと、その表現豊かさに曲中ずっとドキドキさせられる。そのせいもあってか、この日の約1時間のステージは、あっという間に終わった。

 これ程今にも泣き出しそうな表情で演奏をするバンド、他になかなか居ない。しかしその「泣き」は、単なる悲しさではなく、心を最大限に解放した時に生まれる快い感情である。最後の曲『SAKURA』では、4人は完全に心を解放させ、全ての感情を心の中から洪水のように溢れ出しながら演奏していた。普段あらゆるものを誤魔化したり隠したりしながら生きていても、音楽に嘘を付かないjizueの前では、自分の心も素直に成らざるを得ず、見事に涙腺を刺激される。

 この日は、テーブルや椅子が設置された会場にて、座りながら食事と共にjizueのライブを堪能した。114日は、スタンディングのフロアにて、jizueの音に全身を動かされることを楽しみにしている。

スーパーノア

12/2 @ 梅田Shangri-La

PHOTO:hub / TEXT:Y.Yajima

 10/29EPcircle」をリリースし、現在全国ツアー真最中のスーパーノア。

 12/2に行われた大阪でのライブは、『雨の惑星、ステレオの向こう』からスタート。イントロのギター、センチメンタルさ溢れるキーボードの音、そしてサビの壮大さに、1曲目から早々と心を奪われる。

 聴いていると情景が浮んでくる歌詞を心地良いメロディーと共に聴かせる井戸さん(Vo./Gt.)の歌を中心としながら、楽器のサウンドがその歌の表現する想いや景色を引き立てる。

 「漕いだペダルの分だけ オレンジジュースはこぼれて

  影を照らすライトを外した その手でタンバリン叩く」(『ペダル』より)

 CDを聴いていると、この言葉から、少年が勢いよく自転車をこぎながらオレンジジュースがカゴから飛び出ている爽やかな絵が、毎回私の頭に浮かび上がるのだが、今回この曲がライブで演奏されると、それとはまた少し違った情景が浮かんできた。『出町柳』でも、CDからは見えなかった夕方の空が見え、CDとライブではまた違った景色を見させてくれることが楽しかった。

 スーパーノアは、“草食系”なロックバンドだ。「俺たちについてこい!」なんてことは歌わないし、何かにがっつくような姿勢やパフォーマンスも見せない。しかし、2本のギターとベースとドラムが合わさって1つの音として爆発した時には、衝撃的なロックの振動で身体が突き動かされる。赤井さん(Gt.)が右手で拳を突き上げる瞬間や、赤色のギターを我を忘れたかのように弾く姿、また田中さん(Dr.)の腕を高く上げながら全身を使って勢いよくドラムを叩くスタイルからは、ものすごくロックなエネルギーを感じる。

 スーパーノアのライブを観る時は、歌詞、メロディー、楽器の音に加えて、5(サポートKey.ヒロコパックさん[fromときめき☆ジャンボジャンボ]含む)の表情にもぜひ注目して欲しい。叫んだり、嬉しくなったり、切なくなったり、気持ちよくなったり、5人につられてその豊かな表情に自分もなってしまうはずだ。スーパーノアと一緒に喜怒哀楽を共有することは、想像以上に気持ちのいいものです。

空中ループ

11/23 @ 京都VOXhall

PHOTO:hub / TEXT:Y.Yajima

 1/14開催 “Re:Kyoto”の会場でもあるVOXhallにて、14日間行われているフェス・イン・ライブハウス“VOX FESTA!”に出演した空中ループ。

 PaperBagLunchboxが演奏を終えたステージに、空中ループは登場。メンバーが11人ステージにのぼり、それぞれ一礼をする。ただ4人がステージに出てきただけなのに、オーディエンスの顔が微笑んでいるのが見える。空中ループには、人の心をほっこりとさせてくれる安心感や温かさがある。彼らの音楽からそれを感じることはもちろん、メンバー自身の人間性からすでにそんな雰囲気が滲み出ているのだ。

 タワーレコードとのコラボシングルリリース、sleepy.abとのツーマンライブ、東京でのワンマンライブ等、空中ループはこれまで多岐にわたる活動を行ってきた。様々な場において空中ループの優しさ溢れる音楽が届けられる度に、それを受け取ったリスナーの心には小さくとも確かな光が灯された。そして、その11つの小さな光が、空中ループの下に集約され、受け取った全ての光を自分たちの明かりに変えてきた今、空中ループはとてつもなく眩しい光を放っている。

 ライブの途中、曲と曲の合間に大きな波の音が流れ、深海に連れていかれるような感覚に陥った。暗くて恐怖さえ感じるような音だったが、『小さな光』のイントロが流れた瞬間、目の前が一気に明るくなった。空中ループが奏でる音楽は、人々の心に安心感や温かさを確実に与えてくれるが、決してそれだけではない。どんな暗闇の中でも、前方から眩しい光を輝かせ、歩む道を照らして導いてくれる。

 最後の曲『imago』では、フロアからハンドクラップが沸き起こり、会場全体が明るい光に包まれた。

 「世の中、意外と悪くないなあ。世界は、明るい。」約30分間、空中ループのライブを見た後、私の心は確かにそう呟いた。

Antelope

11/13 @ 大阪FANJ twice

PHOTO:hub / TEXT:Y.Yajima

 大阪・ミナミで3日間行われた日本最大級のライブサーキット・MINAMI WHEELの2日目に、FANJ twiceに登場したAntelope。

 細かな音で丁寧に描かれるAntelopeの世界は、SEが鳴り始めた瞬間から始まった。

 2本のギター、ベース、ドラム、そして5つ目の楽器であるリンゴマークのついたラップトップが、それぞれ繊細な音を鳴らし、静かに溶け込み合って幻想的な空間を作り上げる。更には、水色の照明やクルクルと回転するミラーボールに反射する光が、Antelopeの描く景色を引き立てる。

 途中で刀根(Gt./Prg.)がシンセサイザーを鳴らしたり、ギターの弦を弓で弾いたり、また伊勢(Ba.)がラスト2曲ではエレキベースからアップライトベースに持ち替えたりと、1曲1曲に対して、完璧なサウンドにしようとするこだわりと緻密な工夫が見える。

 幾重にも重ねられる楽器の音の中でも、長尾(Vo./Gt.)の吐息混じりの歌とアコースティックギターの音は、いつだって優しく、そして柔らかく響いてくる。現実世界を複雑すぎるくらいに捉えて嫌気がさし、少し目を閉じて夢や幻の世界を見て微笑む。その両方の世界の狭間で揺れながら、なんとか優しい気持ちを保つ。Antelopeの音と詞は、そんな世界や感情の中で浮遊する。

 この日は、私が初めて耳にした、まだ音源化されていない楽曲も演奏された。それらの曲を聴きながら、半年以上前に、曲作りを行っていた長尾くんが「音楽が嫌になりそう」という言葉を漏らしていたことを思い出した。そして嬉しくなった。苦労しながらも生み出された曲たちは、よりサウンドのクオリティーは高く、そして何より長尾くんの書いた言葉が彼の感性でしか書けないものになっていると感じたからだ。それらのリリースは、いつになるか未定であるとのこと。皆様、ぜひライブへ。必聴です。